この記事は以下のような人に向けて書いています
昇進や部署異動などで決算書を読む必要が出てきてしまった人
経理をやっているけど実は貸借対照表【BS】の見方がよくわからない人
損益計算書【PL】はなんとかわかるけど貸借対照表【BS】はチンプンカンプンな人
この記事はこういった人に向けて書いています
投資家向けの記事ではありません
経理経験15年以上で経理の仕訳レベルから決算書の責任者、そして株主総会の計算書の説明担当者までこなす私が貸借対照表【BS】に四苦八苦しているあなたに向けて説明します
今回は第一弾として貸借対照表【BS】の仕組みや構造を大きくマクロレベルで見ていきます
Contents
貸借対照表【BS】の仕組みと読み方ついて
損益計算書【PL】はなんとなくわかるけど貸借対照表【BS】の見方はよくわからない方が多いのではないでしょうか
そもそも貸借対照表【BS】とは何か
貸借対照表【BS】とはある一時点(決算日)の会社が保有する財産の中身を勘定科目と数字で表したものです
一方、損益計算書【PL】は1年間の収益(売上など)と費用(人件費や家賃など)そして収益から費用を差し引いた利益(損失)を勘定科目と数字で表したものです
損益計算書【PL】は1年間の会社の業績を数字で表したもので、貸借対照表【BS】はその業績で積みあがった財産を数字で表しています
[pdf-embedder url=”https://uptomeseitani.net/wp-content/uploads/1eda28bf2cd7ca247e2de8dbdb29adf2.pdf” title=”JINZ①決算日”]
それでは私も愛用しているメガネ販売を展開するジンズホールディングスの貸借対照表【BS】を例にとってその構造や仕組みについて解説します
貸借対照表【BS】の左右の関係について
まず貸借対照表【BS】の左半分がある一時点(決算日)に会社が持っている資産の内訳です
そして右半分がその左半分の資産をどうやって調達しているかが記載されています
[pdf-embedder url=”https://uptomeseitani.net/wp-content/uploads/37f51e822ceff375ef983a2d435c3e31.pdf” title=”JINZ②右左”]
いいかえれば右側は左側の資産を買ってくるために必要な資金の調達方法が記載されているのです
たとえば右側の借入金によって左側の現金預金を調達しています
右側の資本金によって左側の現金預金を調達しています
[pdf-embedder url=”https://uptomeseitani.net/wp-content/uploads/a0cbde0f4ef4e686bf0eaf8b6084445e.pdf” title=”JINZ③現金預金”]
また買掛金や支払手形これから支払う負債なのでこの負債を抱えることで現時点ではその分の現金預金を保有していることになります
もう一度繰り返します
左半分が会社が持っている資産の内訳、右半分はその資産の調達方法が記載されています
貸借対照表【BS】の左側のタテの関係について
右側の調達方法によって左側の資産が形成されているのが分かりました
それでは貸借対照表【BS】の左側はどういった順番にならんでいるのでしょうか
それは現金化しやすい順番、使い勝手が良い順に並んでいます
[pdf-embedder url=”https://uptomeseitani.net/wp-content/uploads/f6dab2951075b5711656b918e7b307cb.pdf” title=”JINZ④左側順番”]
流動資産とは1年以内に現金化が見込めるもの
そして固定資産とは現金化するのに1年以上かかるもの、つまり換金性が難しい資産です
その流動資産の中でもさらに現金化しやすい順に上から並んでいます
現金預金を使って建物や機械そしてソフトウエアなど設備に投資し、それらを使って製品を開発したりしてそれを顧客に売ります
売り上げると売掛金や受取手形という債権を保有します
そしてそれを回収に現金預金に戻ってきます
上図のように現金預金を使って⇒建物や機械設備などに投資
その設備を使って製品を生み出す⇒製品を売る⇒売掛金や手形になる⇒売掛金や手形を現金預金で回収する
ビジネスとは現金預金を使って投資しさらなる現金預金を生み出すことなのです
貸借対照表【BS】で言えばこの左半分をグルグル回っているのです
[pdf-embedder url=”https://uptomeseitani.net/wp-content/uploads/1edf397c0ebc7563d6e4ad922e598824-1.pdf” title=”JINZ⑤左循環”]そして生み出した現金預金を使って右半分の借入金や支払手形などの負債を返済したりします
[pdf-embedder url=”https://uptomeseitani.net/wp-content/uploads/1e012e2ede0d0ba7f833dd96dc5dcb0e.pdf” title=”JINZ⑥負債返済”]貸借対照表【BS】から何がわかるのか?
これまで見てきたように貸借対照表【BS】から読み取れるものはお金の動きです
そして会社を存続させるために一番重要な資産は現金預金です
その理由は会社は負債を払えなくなって倒産するからです
そして基本的に現金預金でしか負債を支払うことができないからです
もっと言えば現金預金でしか支払手形や借入金そして給与や家賃などの経費も支払うことは出来ません
現金預金がないからといって会社の製品で給与分を現物支給するといってもだれも受け取ってくれません
左側の資産はいろいろありますが基本的に負債を返済できるのは現金預金のみなのです
すでに書きましたが現金預金を他の資産に投資しさらに多くの現金を回収しそれを使って左側の負債を返済していくことでしかビジネスを継続していくことはできません
そのために在庫はしっかり売りさばき現金預金に換えること、売掛金はしっかり回収し現金預金に換えることです
このことは営業経験のある方は会社でいつも言われているのでわかりますよね
左側の資産の中で現金預金のみが唯一、負債を返済する能力そしてその他の経費を支払う能力を持っているからです
短期的な資金繰りがわかる
今まで見てきたように貸借対照表【BS】で最初に見るべきポイントは一番大切な資産である現金預金が右側の負債を払えるかどうかです
1年以内に返済する必要がある流動負債を返済するだけの現金預金があるかどうかです
ジンズホールディングスを例に見ていきましょう
[pdf-embedder url=”https://uptomeseitani.net/wp-content/uploads/0bb67b8d8981cf2581015e0dde702688.pdf” title=”JINZ⑦当座比率”]
ジンズホールディングスの現金預金は8,479百万円、対する流動負債は10,669百万円です
『なんだ足りていないじゃないか』と思われるかもしれません
しかしあくまでは流動負債は1年以内に返済する必要がある負債です
1年以内には現金預金の下にある【受取手形および売掛金】の4,396百万円や【商品および製品】の5,211百万円これらの大部分を現金預金に換えることになるので大丈夫なのです
資金繰りを見る重要な指標に当座比率というものがあります
式は【当座資産(現金預金+受取手形および売掛金)÷流動負債】です
ジンズホールディングスに当てはめると12,875百万円÷10,669百万円=120%です
当座比率が120%は資金繰り的にかなり優秀な企業と言えます
自己資本比率で会社の体力がわかる
もう一つ基本的で大切な指標が自己資本比率です
数式は純資産÷総資産です
なぜ自己資本比率が重要なのか
会社は負債が返済できなくなって倒産するからです
自己資本比率は全資産のうち返済する必要のない比率を見る指標です
それではジンズホールディングスを例に見ていきましょう
[pdf-embedder url=”https://uptomeseitani.net/wp-content/uploads/897861c5c7a39c9ca03727235690491a.pdf” title=”JINZ⑧自己資本比率”]
純資産22,370百万円÷総資産36,628百万円=61%です
よく自己資本比率は何%だと良いのかと聞かれますが業種や規模によって割合は違ってくるので何とも言えません
そして自己資本比率がただ高ければ良いというものでもありません
たとえば借り入れをしてその資金で大きくビジネス展開をするチャンスがあるのに無借金経営にこだわってそのチャンスを逃している会社もあります
そしてそれと同じように現金預金をため込んで上手く投資出来ていない会社もあります
要はバランスです
ただ言えるのはジンズホールディングスはものすごくバランスの取れた堅実経営をしています
まとめ
貸借対照表【BS】はある一時点(決算日)の会社が保有している資産を表します
左側に資産の内訳が記載されており、右側にはその資産の内訳をどうやって調達したかが記載されています
そして左側のタテを見ていくと現金預金を建物や機械そしてソフトウエアなどの設備に投資し、製品を作って(在庫になる)それを売って(売掛金になる)現金預金で回収します
左側の資産を下に投資を行い、それを順に上に向かって回収し、最初の投資した現金預金より多くの現金預金を得ていきます
そして回収した現金預金で右側の負債を返済します
これが貸借対照表【BS】チョー基本的な構造です
そして重要な2つの指標を紹介しました
当座比率と自己資本比率です
当座比率は(現金預金+受取手形および売掛金)÷流動負債で短期的な資金繰りを見るのに重要な指標
自己資本比率は純資産÷総資産で会社の体力を見る重要な指標です
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
今後は具体的な企業の貸借対照表【BS】を使って実践的に学べる記事を書いていきます